外来を受診される方 子どもの病気と骨系統疾患(先天性股関節脱臼)
- 東京大学医学部附属病院 整形外科・脊椎外科
- 外来を受診される方
- 診療する疾患のご案内
- 子どもの病気と骨系統疾患(先天性股関節脱臼)
子どもの病気と骨系統疾患(先天性股関節脱臼)
担当グループ
先天股脱グループ
診療時間
第1、2,3火曜日 午前(小児整形)、第1,3火曜日 午後(骨系統疾患)
診療する主な疾患
先天性股関節脱臼、骨系統疾患、先天性内反足、ペルテス病、筋性斜頸、先天性四肢形成不全
先天性股関節脱臼
概要
股関節は骨盤と下肢を連結する重要な関節で、骨盤側の凹み(寛骨臼)に大腿骨側の半球形部分(大腿骨頭)がはまり込む形をしています。この股関節が先天的に適合していない状態を先天性股関節脱臼と呼びます。しかし、赤ちゃんが生まれた瞬間に完全に脱臼していることは少なく、生まれた時には不安定である関節が、徐々に脱臼へと移行することが多く、最近は特に欧米では「先天性」という言葉を用いず、Developmental Dysplasia of the Hip(発育性股関節形成不全)という呼び方をしています。
原因
先天性股関節脱臼は一つの原因だけで生じる病気ではありません。女の子に多いこと、冬に生まれた子に多いこと、逆子に発生頻度が高いこと、などの特徴から、多くの因子が組み合わさって発生すると考えられています。
症状
痛みなどの自覚症状はありませんが、一人で歩けるようになると、歩き方がおかしいことに周囲が気付くことが多いです。
診断と検査
乳児健診において、股関節の開排制限(両膝を立てた状態から足を開いていくと、十分に開かない)やクリック(股関節を動かすとカクッという感触がある)などで股関節脱臼は疑われます。こういった所見を診察で確認することで診断を行いますが、その他にX線検査などの画像検査を行うことがあります。
治療方針
先天性股関節脱臼に対する治療方針は、診断した月齢などによって異なりますが、一番多い生後3ヶ月から6ヶ月頃に診断され場合を例に説明します。 リーメンビューゲルという装具による治療をまず行います。この装具を用いると下肢の動きをある程度許容しながら股関節が自然に整復されるため、股関節の変形を残すことが少ない優れた治療法です。日本には昭和30年代後半に旧チェコスロバキアから当教室の先輩である鈴木良平先生により日本に導入され、坂口亮先生により広く使われるようになりました。私たちの経験では、生後6ヶ月までに治療を開始した股関節脱臼の80〜85%はリーメンビューゲルで治すことができています。 リーメンビューゲルで治すことができなかった場合には、全身麻酔をかけて脱臼した股関節を手で戻すか(徒手整復)、整復のじゃまになる組織が股関節内にある場合には手術をして整復します(観血整復)。この場合、整復後に1〜2週間のギプス固定、さらに数週間の装具の使用が必要になります。なお、これらの全身麻酔を必要とする治療が必要な場合には、関連する医療施設と協力して行う場合があります。
長期経過
股関節の成長は、15歳前後まで続きます。従って私たちは先天性股関節脱臼の治療後は、股関節の成長が終了するまで定期的に診察を行っています。お子さんの状態によりますが、幼児期には数カ月毎、小学校入学後は1〜2年に1回の診察とすることが多いです。リーメンビューゲルで治った場合には、順調な経過をたどることがほとんどですが、徒手整復や観血整復を行った場合には5歳前後の時期に追加の手術が必要になることがあります。