整形外科について 骨軟部腫瘍診

グループ概要

骨軟部腫瘍診では、骨や筋肉などにできる原発性の腫瘍(良性、悪性)の診療を行っています。

スタッフのご紹介

診療実績

悪性骨腫瘍に対する患肢温存手術

悪性骨腫瘍として、骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫などを治療しています。抗がん剤治療(化学療法)は骨肉腫、ユーンイング肉腫などで行い、成人の場合は整形外科で、小児の場合は小児科で行います。手術治療は、原則として罹患した四肢を残す治療(患肢温存)を目指します。腫瘍が関節近傍にあり関節を含めて切除が必要な症例では、腫瘍用の人工関節を用いて関節を再建します(左図)。関節が温存可能な症例などでは、液体窒素処理を用いて腫瘍細胞を殺傷し、自分の骨を用いて再建します(右図)。症例によっては、形成外科の医師と協力して、他の部位から自分の骨を採取して、切除した骨を再建することもあります。腫瘍を根治することを主目標とし、さらに四肢の機能が少しでも良くなるように努めています。他に、おしりの骨(仙骨)などによく生じる脊索腫(せきさくしゅ)という疾患や骨盤や肋骨などに生じる軟骨肉腫などに対しては切除可能と判断したら積極的に切除するようにしています。

悪性軟部腫瘍に対する治療

in situ preparation法により腫瘍に近接する神経・血管を温存している
下腿前面の腫瘍切除後の組織欠損に対して広背筋(背部の筋肉)と皮膚によ再建を行なっている

悪性軟部腫瘍は、筋肉、脂肪、神経など全身あらゆるところに生じます。画像検査がすでに行われて受診される方は、初診時に超音波検査を併用して外来で針生検を行い、組織診断を早期につけるようにしています。術前術後の抗がん剤治療は、深いところに発生した5cm以上の悪性度の高い腫瘍に対して、AI療法(ドキソルビシン+イホスファミド)を原則として行います。また、手術のみで確実な切除が困難な場合は放射線治療を併用します。手術は、腫瘍を周囲の正常組織で包んで切除(広範切除)を行います。腫瘍に血管や神経などが近接している場合には、in situ preparation法と言って、術中に神経や血管が温存可能か判断し、アルコール処理を行ってこれらの組織を温存するようにしています(左図)。腫瘍切除によって皮膚、筋肉、神経が切除される場合には、形成外科の医師と協力してなるべく機能が回復できるように再建します(右図)。悪性軟部腫瘍は主に肺転移が生じますが、局所再発して切除が困難な場合など、ヴォトリエント、ハラヴェン、ヨンデリスなどによる化学療法を行います。これらの治療が適切に行えるように効果予測、早期治療効果判定の研究を行なっています。また、ゲノム解析を行い、診断治療に活用しています。

体幹部腫瘍(脊索腫、軟骨肉腫、脂肪肉腫など)に対する治療

先述のように悪性骨軟部腫瘍は全身あらゆるところに生じますが、肋骨、背骨(脊椎)、骨盤、仙骨、お腹の中(後腹膜)に腫瘍が発生した場合、治療に難渋することがあります。例えば脊索腫(せきさくしゅ)は仙骨(おしりの骨)、脊椎(せぼね)に生じますが、整形外科の脊椎グループと協力して可能な限り切除しています(左図)。確実な切除を行うために、ナビゲーション技術を用いて腫瘍を取り残さないように工夫しています。切除困難な部位、切除によって機能が著しく低下する場合は、重粒子線治療をお勧めすることがあります。また、後腹膜(お腹の中)には脂肪肉腫(しぼうにくしゅ)や平滑筋肉腫(へいかつきんにくしゅ)などが生じますが、完全切除を目指して外科、泌尿器科、血管外科の医師と協力して、安全かつ確実な手術を行うことを心がけています(右図)。

腫瘍性骨軟化症に対する治療およびナビゲーションシステムを用いた治療

成人後に低リン血症による骨形成障害が生じる病態を骨軟化症といいますが、腫瘍が原因で低リン血症となる疾患を腫瘍性骨軟化症といいます。これは腫瘍から分泌されるFGF-23というタンパク質が腎臓におけるリンの再吸収を阻害することによって低リン血症となります(左図)。成人後に背骨(脊椎)、足の付け根(大腿骨)、肋骨などの骨折が生じ、疼痛のため生活が著しく障害されます。診断がつくまで時間がかかることが多いこと、腫瘍がどこにあるか見つけるのが難しいことなどが問題となります。東大病院では、腎臓内分泌内科で腫瘍の部位を特定する方法(静脈サンプリング)を行なっており、原因となる腫瘍が骨や軟部組織にある場合に整形外科で手術を行なっています。原因となる腫瘍が小さく、深い部位に存在すること、正常な骨と腫瘍が肉眼で判別しにくいことが多いため、骨に発生した場合には術中ナビゲーションシステムを用いて手術を行っています(右図)。これは、術中に画像検査を行い、術中操作部位の2次元および3次元の画像情報がえられます。良性腫瘍だけでなく、悪性腫瘍手術にも使用しているます。完全な切除をしないと骨軟化症が改善しないことから、手術が非常に重要です。稀な疾患ですが、当科ではこれまで15例程度の手術を行っています。

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